「ブッダ 最後の旅」

「それ故に、この世で自らを島とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法を島とし、法をよりどころにして、他のものをよりどころとせずにあれ」 結局ブッダの教えとは、人間としての苦しみというのは、人に或はモノに執著していくことにある。自分の…

「幸福写真」(荒木経惟)

「内裏造らるるにも、必ず作り果てぬ所を残すなり」多く残されている、昔のノートを見る。20代から30代ぐらいものだと思う。その頃からも多くの本を、今に比べればもっと多様なジャンルの本を読んでいたことがわかる。手当たり次第に、何でもかんでもといっ…

「すらすら読める 徒然草」(中野孝次)

「吾が生すでに蹉跎なり、諸縁を放下すべき時なり、信をも守らじ、礼儀をも思はじ」植えてからまだ四五年しかたっていないのに、柿に実がなった。初夏の頃はもっと多くの実が付いていたが、最終的に3個だけが残った。台風18号の暴風雨にも落ちなかった。で…

「こどものころにみた夢」(角田光代他)

「その人の一生を決めるのは、実は便器なんだなぁ。便器を選ぶことが、そのままその人の生き方を選ぶことになる。」ものを書くとか絵を描くとか、その、表現行動というのは排泄行為に似ている。というか、そのものである。排泄するという夢を見たら、私の場…

「本を書く」(アニー・ディラード)

「『あなたがあのお話を書いたの?』・・・『それともタイプしただけ?』」それほどの違いはないと思う。意識的に書くということもあるのだろうし、無意識的に書いているときもあるのだろうと思う。そう、それほどの違いはない。まだ、自分がそうなっている…

「塩一トンの読書」(須賀敦子)

「あぁ、もっと本を読まなくちゃ!」と、書評というのでもないが、こういう本を読むと必ず思う。長田弘さんの本でも感じてきた。本当に世には一杯いっぱい本を読んでいる人がいるんだ。自分も多くの本を読んできたつもりでいるが、まだまだ知らない本が多く…

「ヒトラーとユダヤ人」(大澤武男)

ユダヤ人というのは、欧米においてはどのような受け留められ方をしているのだろうか。そのことがずっとわからないままになっている。その宗教に起因するのか、独自の生活習慣や文化を持ち閉塞的な集団を形成していると見做されいる。或は、経済界、金融界や…

『ブッダの 真理のことば 感興のことば』

少し前NHK教育番組で、片山恭一が森有正について解説を試みていた。解説自身、何を言っているのか理解できなかった。また森有正自身が何を考えていたのかも、全然分からなかった。頑張って、全集の1巻目『バビロンの・・・』を読んでみようとしたが、うむ、…

『詩を読む若き人々のために』(C.D.ルーイス)

些細なことだけど、台風18号の進路予想を見ていて、午前4時ごろだったのか、志摩半島の先まで進んで来ていて、伊勢湾の入り口でキュッと上へ曲がっている予想方向がどうにも不可解で、真っ直ぐに進んでいくのが自然だろうと思っていた。でも実際の進路は、本当…

『虫類図譜』(辻まこと)

発刊当時は、多分話題になった本なのだろうと思う。内容的には、吃驚仰天!というか、度肝を抜かれるというか、こういう本も在り得るのだろうかという、そう、当時においては新境地を開いた本だったのだろう。期待を持って見てみたが、どうなのだろう。隔世…

『老いと向き合う介護』(冨田順子)

家政婦というイメージがあるのか、ヘルパーという言葉はどうにも軽過ぎる気がする。介護というのは、身体介護や生活介助を通して、今までの人生に纏まりをつけていくということである。「影」として今までに生きられなかったところも含めて、人生を統合して…

『老人力』3

老人力ということは、結局、自分のできないことはできないこととして無理はしないということ。できるところのことだけ、好きなことだけ、続けて行けることだけ、そのようなことだけを行っていくということなのだろうと思う。若いときは、その有り余るエネル…

『老人力』?

この本を読んでいて、「介護の基本方針に利用者の今までの生活習慣を大事にしていく」ということがあるけれど、それって本当に大事なことなのかなぁと思う。自分の心身機能全体を自我と自己に分けて考えれば、生活習慣というのは、自我が自分の能力に見合っ…

『老人力』(赤瀬川源平)

前回の本にしても、なんとか最後まで読んでみようと思う。が、でも無理。面白くない。面白くないのに、屹度何かいいことが書いてあるのだろうという期待を持って読み進んでいく。が、でも無理。面白くなければ、どうにもならない。自然と放棄してしまう。若…

「『ゆっくり』の叛乱」(河野秀忠)

ゆっくりを登っていくというペースは、この夏の富士登山のときに実得した。8合目の山小屋から頂上まで普通2時間掛かるという登山道、大勢な人々の中を、ゆっくりゆっくり、半歩以下、或は爪先に踵が接するぐらいの歩幅で、更にそれ以下で、ゆっくりゆっく…

『人間、この非人間的なもの』(なだいなだ)

1年ぶりに再開する。特別な意味は無い。また始めたくなっただけのこと。この本の発行は30数年ほど前。まだ社会主義とか革命という言葉が命脈を保っていた時代だった。理想として信じられていた。「人間は、人間的である」という一文が当たり前ではなくて、そ…

『ファイアズ(炎)』(レイモンド・カーヴァー)

「自分が机に向かって短篇小説を書き始めるとき、ほとんどの場合、その話がどう進んでいくかという見通しなんて持っていないのだと(フラナリー・オコナー)」借り出し期間が既に半ばを過ぎてしまっていたその本を、もう一度読み始めてみる。もう手に取ることはないと思…

『物語の役割』(小川洋子)

昨日から雨が降り続いている。台風15号の影響らしい。前の13号と同じように台湾まで行って戻って来るというコースを辿っている。そのまま西へ行ってしまえばいいものを。向こうの人は安堵しているのかもしれないが。そのコースを見ていると、確かにポテンシ…

『武士道セブンティーン』(誉田哲也)

秋晴れに誘われて昨日も自転車に乗って出た。気候的には申し分なかったが、でも充分には楽しめなかった。何故だろう。思うところ、それは目的地を決めていたからだと。前回は南西方面だったから、今回北西方面へ向かっていこうと暗に思い描いていた。それが…

『ゲド戦記外伝』(ル=グウィン)2

「魔法は名付けに始まり、名付けに終わる」 日曜の午後は自転車を乗り回している。特に目的地を決めないで自由に走っている。分かれ道に来たときが緊張する。ぱっぱっと両方を見て、瞬時にどちらへ往くのかを判断している。選択した方向が行き止まりでも悔や…

『ゲド戦記外伝』(ル=グウィン)

「あの森のことは、なかに入って、森自身から学ぶしかありません」 定期健診の為に、病院の待合室でTVショッピングの番組を見るともなく見ていた。「○○ライト」という錠剤を呑んでいれば、通常の飲み食いしていても無理なくダイエットが出来るという。医学博…

『崖の上のポニョ』

日曜日の午後、自転車を走らせながら、ふと思った。「『ポニョ』には決定的に悪い人は出てこないんだ!そういえば、『千と千尋・・・』にも出ていなかった。結局湯婆婆もいい人だった」 「悪」といえるのは何なのだろうかと。『ナウシカ』の巨人兵か。全てを焼…

『雲のむこう、約束の場所』(新海誠)

「質量の起源と考えられる『ヒッグス粒子』の発見などを目指して造られた大型粒子加速器「LHC」が10日、スイスのジュネーブ郊外で運転を始める。」 その加速器内でブラックホールが作られ、地球も呑み込まれてしまうのではないかという危険性もあると聞…

『夕顔の言葉』(壺井栄)

「たった三粒の種、それが百倍もそれ以上にもなって、次の生命に備えてゐる姿、それは、花が散ったと淋しがる人の心に、無言の言葉をなげかけてゐるようでした」 数年前、盗人萩はたった一株しかなかった。それが今では庭のあちらこちらで厭になるほど葉を茂…

『すこやかに おだやかに しなやかに』(谷川俊太郎)

「静かな気もちで こころの奥を見つめるとき おそれからもこだわりからも解き放たれる」 読むことと書くことが、自分にとっての基軸にあることに変わりは無い。書くことについて、手書きということへの拘りも今少し薄れて来ている。また手書きでは追いつかな…

『わたしの愛した孤独』(メイ・サートン)

「牧草地の雑草を取りながら、わたしは自らの内なる雑草を摘み取ることを覚えた」毎週土曜日の午後は庭仕事と決めている。といっても、ほとんどの作業は雑草取り。この頃それもプロの領域に入って来ていると自画自賛している。梅雨時には雨降る中でも草取り…

『迷子になった鳩』(エリアン・ウィルソン)

「最初にここへきたのは、創造の精霊でした。創造の精霊は、自分の創造物の中に存在しています。すべてのものの名付け親でもあります。風のように速く走るブッシュマンたちはこう言っています。精霊は花になり木になり、水や鳥になり、そして人間になった、…

『ゲド戦記? アースシーの風』2(ル=グウィン)

「この世界が大きく変わろうとしているみたい。知っていたものなどなくなってなにもかもが新しくなるのかもしれない」人の性格にしても組織の有り様にしても、物事はなかなか変わらない。今の名前に縛られてしまっている。松田聖子はいつまで経っても「松田…

『アースシーの風』(ル=グウィン)

「子猫が獲物を苦労しながらも誇らしそうに甲板の上を引きずっていくのを見て、水夫のひとりは子猫をヒッパリと呼ぶようになった」 唯、そのようなことなのだと思う。モノの名前について、植物の名前にしても動物にしても、その形態上の一特徴や行動の一特性…

「人を動かす」(D・カーネギー)

この本は、世界中でベストセラーになっている本らしい。まあ、それも分かる。この本の内容は、相手の存在を認めていく。相手の重要感を認めていく。そして、人間関係を良好なものにしていくものである。その意味で分かる。でも、それは、あくまでも性善説に…