2008-01-01から1年間の記事一覧

『ファイアズ(炎)』(レイモンド・カーヴァー)

「自分が机に向かって短篇小説を書き始めるとき、ほとんどの場合、その話がどう進んでいくかという見通しなんて持っていないのだと(フラナリー・オコナー)」借り出し期間が既に半ばを過ぎてしまっていたその本を、もう一度読み始めてみる。もう手に取ることはないと思…

『物語の役割』(小川洋子)

昨日から雨が降り続いている。台風15号の影響らしい。前の13号と同じように台湾まで行って戻って来るというコースを辿っている。そのまま西へ行ってしまえばいいものを。向こうの人は安堵しているのかもしれないが。そのコースを見ていると、確かにポテンシ…

『武士道セブンティーン』(誉田哲也)

秋晴れに誘われて昨日も自転車に乗って出た。気候的には申し分なかったが、でも充分には楽しめなかった。何故だろう。思うところ、それは目的地を決めていたからだと。前回は南西方面だったから、今回北西方面へ向かっていこうと暗に思い描いていた。それが…

『ゲド戦記外伝』(ル=グウィン)2

「魔法は名付けに始まり、名付けに終わる」 日曜の午後は自転車を乗り回している。特に目的地を決めないで自由に走っている。分かれ道に来たときが緊張する。ぱっぱっと両方を見て、瞬時にどちらへ往くのかを判断している。選択した方向が行き止まりでも悔や…

『ゲド戦記外伝』(ル=グウィン)

「あの森のことは、なかに入って、森自身から学ぶしかありません」 定期健診の為に、病院の待合室でTVショッピングの番組を見るともなく見ていた。「○○ライト」という錠剤を呑んでいれば、通常の飲み食いしていても無理なくダイエットが出来るという。医学博…

『崖の上のポニョ』

日曜日の午後、自転車を走らせながら、ふと思った。「『ポニョ』には決定的に悪い人は出てこないんだ!そういえば、『千と千尋・・・』にも出ていなかった。結局湯婆婆もいい人だった」 「悪」といえるのは何なのだろうかと。『ナウシカ』の巨人兵か。全てを焼…

『雲のむこう、約束の場所』(新海誠)

「質量の起源と考えられる『ヒッグス粒子』の発見などを目指して造られた大型粒子加速器「LHC」が10日、スイスのジュネーブ郊外で運転を始める。」 その加速器内でブラックホールが作られ、地球も呑み込まれてしまうのではないかという危険性もあると聞…

『夕顔の言葉』(壺井栄)

「たった三粒の種、それが百倍もそれ以上にもなって、次の生命に備えてゐる姿、それは、花が散ったと淋しがる人の心に、無言の言葉をなげかけてゐるようでした」 数年前、盗人萩はたった一株しかなかった。それが今では庭のあちらこちらで厭になるほど葉を茂…

『すこやかに おだやかに しなやかに』(谷川俊太郎)

「静かな気もちで こころの奥を見つめるとき おそれからもこだわりからも解き放たれる」 読むことと書くことが、自分にとっての基軸にあることに変わりは無い。書くことについて、手書きということへの拘りも今少し薄れて来ている。また手書きでは追いつかな…

『わたしの愛した孤独』(メイ・サートン)

「牧草地の雑草を取りながら、わたしは自らの内なる雑草を摘み取ることを覚えた」毎週土曜日の午後は庭仕事と決めている。といっても、ほとんどの作業は雑草取り。この頃それもプロの領域に入って来ていると自画自賛している。梅雨時には雨降る中でも草取り…

『迷子になった鳩』(エリアン・ウィルソン)

「最初にここへきたのは、創造の精霊でした。創造の精霊は、自分の創造物の中に存在しています。すべてのものの名付け親でもあります。風のように速く走るブッシュマンたちはこう言っています。精霊は花になり木になり、水や鳥になり、そして人間になった、…

『ゲド戦記? アースシーの風』2(ル=グウィン)

「この世界が大きく変わろうとしているみたい。知っていたものなどなくなってなにもかもが新しくなるのかもしれない」人の性格にしても組織の有り様にしても、物事はなかなか変わらない。今の名前に縛られてしまっている。松田聖子はいつまで経っても「松田…

『アースシーの風』(ル=グウィン)

「子猫が獲物を苦労しながらも誇らしそうに甲板の上を引きずっていくのを見て、水夫のひとりは子猫をヒッパリと呼ぶようになった」 唯、そのようなことなのだと思う。モノの名前について、植物の名前にしても動物にしても、その形態上の一特徴や行動の一特性…

「人を動かす」(D・カーネギー)

この本は、世界中でベストセラーになっている本らしい。まあ、それも分かる。この本の内容は、相手の存在を認めていく。相手の重要感を認めていく。そして、人間関係を良好なものにしていくものである。その意味で分かる。でも、それは、あくまでも性善説に…

『人間力を高める読書案内』

正午からの時間が空いてしまっている。時間潰しのような感じでもう一度書いてみようかと思う。何をテーマに書いていこうかと、そのことについても迷っている。そして、時間の遣い方についても迷っている。いろいろ遣り繰りしてもどうにも巧くいかない。遣り…

「先端にまで・・・」

昨晩、NHKの番組「プロフェッショナル」をたまたま見てしまう。主役は、カテーテルを遣って検査や手術を行う心臓外科医のことであった。それを指先で巧みに操りながら、太腿から入れて心臓の冠動脈へと血管の中を移動させていく。少しでも操作を誤れば血管を…

「五十肩?」

先週の初めから週末や休日も同じように、一日も欠かさず「書」を行おうという方針を実行していた。習字を書く、篆刻もする、そして文章も書き続けていくのが大事と決めていた。日曜日の夕方頃、何か右肩上腕部にピリッとした痛みというか、微電流が走った感…

『文章のみがき方』 (辰濃和男)

昨日の昼、眼鏡のフレームの溶接が外れてしまった。修理に出す。今は代車ならぬ代鏡(?)を掛けている。ピントが合っていないためか、少し暈けているのと机の上が水平になっていず左が微かに上がっているように見える。もう少しすればこの感覚にも慣れていくの…

「哀悼の意味を込めて」

今、その、居ないということが、そのときはそうでもなかったのに、だんだんと気持ちを沈み込みこませていく。だんだんと重さが増えていくような錘を抱えているような気がする。身動きすることも億劫なことになっていきそうだ。これほどの存在感を持っていた…

マルティン・ブーバー 『我と汝』

「私は一本の樹木を見つめる。…樹木はわたしの対象であり、場所と時点を占め、性質と状態を持つ。しかし、もしみずからの意志と他からの恵みによって、この樹木を見つめているとき、わたしが、樹木との関係の中にひき入れられるということも起こり得る。この…

[

『ダンス・ダンス・ダンス』

村上春樹を読み続けている。『羊をめぐる冒険』からこれに這入る。その中で、いい文章に出逢う。主人公の僕が羊男と再会した場面、「・・・僕は壁の上の影を眺めながら、仄暗い光の中で僕の置かれている状況について彼に話した。僕は本当に久し振りに心を開いて…

昨日思っていたこと、2つ。

家では2匹の猫を飼っている。年老いた猫と食べ盛りの猫。冬になると、その2匹にとっては炬燵の下が安住の場所になる。昼でも夜になっても、その空間かその近辺で、これ以上は無理というぐらいに伸び伸びと寝ている。朝起きてきて「いないなぁ」と思っても、…

「村上春樹を再読する」

ああ、今は、どうにも閉塞的な状況だ。仕事場での人間関係も上っ面を滑っていく会話も煩わしいことだらけだ。そう、井戸の深い底へ降りていっているような感じがしている。その井戸の底で蹲っている。でも、四面楚歌的なことではなくて、その底から何処かに…

「習字を書く」

赤手本を見て習字を書いている。気持ち的にはできるだけそれを忠実に書こうとしている。赤手本には罫線が引いてあり更にそれに影響されてきた。でも、この頃思う、でも何かが違うと。その見た目の感じと実際に何処へ筆を置き運筆していくのかは違うと。線ど…

対話をしているとき、実は「4者」関係が成り立っている。自分の内において、意識の世界に居る「自我」と意識下に居る「自己」、その「2者」に分けて考える。相手も同様に、それぞれに対応する「自我」と「自己」の2者が居る。その、合計「4者」関係が存…

[

今週の初めから、生活のリズムが崩れてしまっている。大寒を過ぎて、全体的に凍りついてしまっているようだ。時間割を決めたはずなのに守ろうとしていない。多分、本心では守る気のないものを無理矢理決めてしまったようだ。体調も思わしくない。仕事場でも…

「もうワープロは遣わない」

この頃ワープロで作られた文章ほど読みにくいものはないのではないかと思っている。まさに自分自身の文章がそうなんだ。どうしても文が甘くなり冗長になってしまっている。書かなくてもいいことまでクドクドと書き込んで、構成もガタガタになってしまってい…

「絨毯が濡れている」

朝方少しウトウトしかけたときに夢を見ていた。その時間帯にはよく見る。眼の先にある絨毯の一部がテラテラと光っている。なんなのだろう。水のようなものが溜まっているようだ。犬猫がおしっこをしたのかと疑ってみる。それにしてはちょっと量が多過ぎるよ…

『私』(谷川俊太郎詩集)

ビデオに撮ってあった「ホテル・ルワンダ」を観る。撮ってはあっても何か観たくないなぁという気がしていた。過去のルワンダの状況から多分暴力や虐殺シーンがあって、厭な気分だけが残ってしまうのではないかと感じていた。その映画評論を読んだ記憶もあった…